無人搬送車は便利な搬送車ですが、安全に取り扱うための「安全通則」が日本工業規格(JIS)により規定されています。ここでは、無人搬送車の安全通則の概要について、また理解しておくべきポイントを解説していきます。
無人搬送車における安全通則とは、冒頭で述べたとおり、日本工業規格(JIS)による、無人搬送車を活用する際に安全性を確保するための様々な取り決めです。
「速度」や「点検・補修」、「右折・左折」、「緊急停止」、「通路の整備」など、様々な分野にわたって安全を確保するための方法が規定されています。
安全通則を理解しておくことで、無人搬送車を安全に使用してトラブルを回避できるようになります。では、安全通則の大事なポイントを見ていきましょう。
無人搬送車における安全通則で理解しておくべきポイントをまとめました。
無人搬送車の走行速度に関しては、以下の3つの規則が定められています。
この内、2と3の規定は、使用環境に見合う十分安全な走行速度(低速)に固定して使用する場合は除外されます。
参照元:日本工業規格 JISd6802:1997「無人搬送車システム-安全通則」(https://kikakurui.com/d6/D6802-1997-01.html)
安全通則の中には、無人搬送車の点検・補修に関する規定もあります。
使用者目線で抑えておくべきポイントは、点検項目・点検時期・点検内容・点検方法に関しての基準、保守・点検を行う際は「十分にシステムを理解した責任者の管理のもとで作業を行わなければならない」という作業者に関する規定、さらには、作業中であることを示す表示や、作業者、歩行者に対する立ち入り規制など、点検・補修を行う際の安全確保に関する規定です。点検・補修に関しては他にも複数の規定があります。
また、点検・補修の安全通則は、製造者向けのものと使用者向けのものがあるので、注意深くチェックして使用者の規定を理解しておく必要があります。
「右折・左折」に関する安全通則には、「左折、右折表示灯 無人搬送車の左折又は右折方向を識別する必要がある場合は表示灯を点灯すること」という規定があります。この場合の表示灯とは、車両の方向指示器と連動して点滅するランプ(表示灯)のことです。安全を確保しながら適切に走行するための保安装備の基本です。
緊急停止に関する安全通則は関連規定も含めて多岐にわたります。一つは、緊急停止した場合の作業者の対応に関するものです。何らかの異常により無人搬送車を緊急停止した場合は、「作業者がその異常を解除し、安全を確認したうえで再起動させるまで動作停止が継続しなければならない。」と規定されています。
また、緊急停止に伴う搬送物の落下防止に関しては、「必要に応じて荷物の落下を防止するストッパを装備するなど搬送物の落下防止構造とする。」(搬送物の把持 積載装置部)という規定もあります。
関連規定としては、無人搬送車が緊急停止した場合は、「その異常が解除されてもその停止原因の安全が確認されない限り、再び動き出さないこと」、「停止状態の維持 無人搬送車は、停止時に起動指令がない限り動き出さない構造とすること。」などが安全確保で理解しておくべきポイントです。
参照元:日本工業規格 JISd6802:1997「無人搬送車システム-安全通則」(https://kikakurui.com/d6/D6802-1997-01.html)
通路の整備に関する安全通則は、通路に関するものと路面に関するものがそれぞれ規定されています。通路の整備については、「無人搬送車の通路が一般通路を共用する場合、歩行者の退避するスペースを確保すること。」と記載されています。
また路面については、「無人搬送車システムの路面は、無人搬送車の仕様によって制約があるので、安全な走行ができるよう、事前に補修を行うこと」となっています。
参照元:日本工業規格 JISd6802:1997「無人搬送車システム-安全通則」(https://kikakurui.com/d6/D6802-1997-01.html)
リスクアセスメントとは、職場の危険性や有害性を特定し、リスクを除去・低減するための一連の手順のことを指します。 2006年労働安全衛生法第28条の2により「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置」として、その実施が努力義務化されました。(※)事業者は適切な労働災害防止対策を実施しなくてはいけません。具体的な進め方については、厚生労働省から「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。
多様な設備、物質が使用されている現代、それに伴う危険性・有害性も多様化しています。何がリスクとなるのかの見極めや優先度の選定を適切に行い、そしてリスクに対して対策を講じることが大切です。もちろん人と稼働領域を共有するAGVにおいても、リスクアセスメントは非常に重要です。
※参照元:厚生労働省|リスクアセスメントの基本(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/100119-2a.pdf)
まずは、例えば稼働範囲を設定したり走行速度の制限を設定したりなど、機械の使用範囲や、設置環境や稼働時間の限定など仕様を決定します。
機械類の制限において設定したエリア内をAGVが走行するとき、どんな危険があるのか、どのようなトラブルが発生する可能性があるのかといった危険源を同定(見つけ出す)し、明確にします。
危険源には積載した物の落下や、人との追突などが挙げられます。
同定したすべての危険源に対し、個々にリスクを見積もります。例えば危険源が積載物の落下ならば、作業員が負傷するリスクがあるということです。
リスクは、同定された危険源で被災したときの「危害のひどさ」と、リスクが発生した場合の「危害の発生確率」の組合せによって大小を見積ることが可能です。
リスク見積もりの結果に基づき、リスクを軽減するための処置が必要かどうかを決定するリスク評価を実施。リスク低減が必要と評価された場合には、リスク低減方策の適用を行うことになります。
例えば「物の落下によって発生した作業員の負傷は許容できるリスクではないため低減方策の適用が必要」と判断されれば、リスク軽減方策として「AGEから積載物が落下させないための機械的構造を追加」などを適用します。