自動車工場における課題と改善策について紹介します。また、無人搬送車を導入することによって解消が期待できる課題や、無人搬送車導入事例についてもまとめました。
プレスとは、ボンネットやドアなど車体を構成するパーツをかたち作る工程のこと。鋼版を切り、プレス機で圧力をかけてパーツを成形します。また、穴あけや曲げ加工も行うこともあります。
従業員が直接パーツに手を触れて作業することは基本的になく、パーツを作ることから出来上がったパーツを運搬するまですべての工程は機械で行われます。機械が滞りなく作業を行っているか見守り、必要なオペレーションをすることが主な仕事です。
自動車の骨格となるパーツを熱によって接合する工程が溶接です。溶接の作業もほとんど機械が担当するため、作業員の仕事は機械操作が中心となります。ただしプレスとは異なり、溶接がきちんと行われているか人の手によってチェックする工程があります。数が多い接合部分を、自身の目や手で確実に確認しなければなりません。注意力や責任感が必要な工程です。
骨格ができたら塗装を行います。自動車をキレイに仕上げるため、またホコリや錆から守るために何種類もの塗料を重ねて塗る必要があります。この作業もすべて機械によって自動で行われます。ただし検査では人の目や手触りでも行われ、塗装にムラがないか慎重にチェックします。検査は誰でもできるわけではなく、各工場で実施している研修および資格認定試験の合格者のみが対応できます。
エンジン製造には、鋳造・機械加工・熱処理・エンジン組み立て・検査などの作業があります。エンジンを製造するだけあって、ここでの工程は人の手による作業が増えます。特に組み立ては人の手作業で部品を取り付けます。
組み立てが終われば精密検査を行います。エンジンは少しの不具合が大きな事故に繋がりかねません。わずかな歪みや傷も見逃さないよう、ミクロン単位でのチェックを行っています。
組み立ては自動車工場のメインとなる工程です。出来上がった車体にエンジンや別の工場で製造された部品を取り付けていくもので、多くの人がこの作業を担当することになります。
作業は人の手作業によるものと機械が自動的に行うものに分かれます。特に人の手が必要なのはエンジンで、数人がかりで連携して組み立てます。パーツを取り付けることでどんどん自動車らしいカタチになっていくため、自動車工場で働いているという実感や満足感を得られるでしょう。
検査は、自動車の安全性を担保するうえで重要な工程となります。工程は複数の段階に分かれ、人の手によって入念に実施。検査スタッフは、各工場で定められた研修を経て認定を受ける必要があります。
すべての検査で合格した自動車のみが出荷されます。もし1項目でも合格できなかった場合は、担当の工程に戻され修理されてからもう一度検査を行うことになります。
自動車工場で働く人の平均年齢は上昇傾向にあります。しかし、若者の車離れもあり自動車工場で働きたいと思う志望者は減少しているため、人手不足が課題となっています。
特にハイブリッド車・電気自動車に対応できる自動車整備士の育成が求められているなか、業界に蔓延する若者を中心とした人材不足は大きな問題となってきています。
離職率の高さも課題のひとつです。自動車工場の仕事はハードなため、肉体労働による疲労が蓄積します。また作業は危険と隣り合わせで、労災事故が起こる可能性も。ひとりの作業の遅れで生産ラインのペースを乱せないというプレッシャーを感じる人もいるでしょう。結果として離職率が高くなり、人手不足に繋がっているのです。
積極的な若年層の採用活動を行うことが人手不足解消に繋がります。そのためには「きつい」「汚い」「危険」という負のイメージを脱却する必要があります。職場環境の整備や、処遇の改善をアピールすることで興味を持つ人が増えてくる可能性があります。
また自動化システムを導入して業務や教育体制の効率化を図るなど、業務体制を見直すことも人手不足解消に効果的でしょう。
従業員とのコミュニケーションの活性化を図ることでモチベーションが向上します。賃金引上げや柔軟な休暇取得体制の取組みも必要でしょう。モチベーションが上がることで、離職率の改善が期待できます。
無人搬送車によって、自動で製品・部品を搬送するようになれば搬送作業の負担を軽減することができます。搬送に充てていた人員をほかの部門へ移すことができるため、労働力不足問題に貢献できます。
人が作業をするとどうしてもミスは発生します。無人搬送車は、あらかじめ設定した作業を忠実に実行します。人的ミスを削減できるでしょう。
自動車工場にはさまざまな製造機、出荷製品や製造に使用する部品などが設置されています。そのような状況の中、無人搬送車を使用すればスペースの有効活用に繋がります。無人搬送車をベルトコンベアの代わりにすることができれば、面積の削減にもなるでしょう。
自動車工場における実際の無人搬送車導入例を見ていきましょう。
製造機から仕上げ工程までの距離が長いことが課題だった自動車工場。長距離の搬送なのでコンベアを敷いたり天井レールを設置したりするのはスペース的に難しかったのですが、無人搬送車の導入で移載を含めた搬送に従事する人員を完全に無人化を実現。生産能力の増減に応じて必要な台数を稼働できるというメリットも生まれました。
今後の少子高齢化に対応するためにも現在手で行っている作業の自動化が課題だった自動車工場。無人搬送車を導入することで、コンベアのやわらかいラインの構築が実現。業務効率化による工期短縮というメリットが生まれました。